ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、2024年12月イーロン・マスクは世界で初めて個人資産額が4000億ドル(約61兆円)に達した人物となった。直近では、マスクが率いる未上場の宇宙開発企業、スペースXの企業価値が約3500億ドルと評価されたことで個人資産は一気に拡大したようだ。

それに、今回のアメリカ大統領選挙でトランプを強力に支持し、その当選に大きく寄与したことも資産急増に繋がっている。そんなマスクの考え方を象徴するものとして「第一原理思考」と言われるものがある。

マスクは、スペースXについてのインタビューで、「私には、物理学的な枠組みでものごとにアプローチする傾向がある」と語っている。つづけて「物理学が教えてくれるのは、類推ではなく第一原理をもとに理屈を考えることだ。だから私は、第一原理に基づき、ロケットは何でできているのかから考え始めた。航空宇宙グレードのアルミ合金と、若干のチタン、銅、炭素繊維だ。それから、これらの材料の商品市場での価値はどれくらいか。その結果、ロケットの材料費は、一般的なロケットの価格の僅か2%ほどだということが分かった」と言っていた。そして数年のうちに、ロケット1台の打ち上げ費用をNASA(アメリカ航空宇宙局)などの10分の1近くまで削減した。

マスクが人類を火星へ送る計画を追求しようと決意したとき、最初に分かったのはロケット1台を購入するのに最大6500万ドルの費用がかかることだった。そこでマスクが行ったことは、「手ごろな値段のロケットを見つける」のではなく「ロケットをそれほど高価なものにしている要因は何か」を考えることだった。

問題をその「根本的な部分」まで分解し、原理や真理を見つけ出すアプローチ。これが彼を世界一の大富豪にした「第一原理思考」(first principles thinking)と言われるものだ。