この第一原理思考は、経済学を理解する上でも非常に有効だ。そこで「人口100人の島」を考えてみる。

この人口100人の島では、10人が農民で100人分の食料を生産し、30人が職人で100人分の道具や消耗品などのモノを生産、40人がサービス業で100人分のサービスを提供、20人が公務員で国の運営や国防を担当している。そして、この島は現状ちょうど上手く回っている(=需給バランスが取れている)とする。

しかし隣国が軍備を拡張しているので、国防のためサービス業から20人を公務員に移動させる必要が発生した。その結果サービス業は供給力不足で、今までの半分しかサービスを提供できなくなった。

困った島の政府は国債を大量発行して、島の皆んなにお金を1億円づつ(合計100億円)配った。しかし結果は、サービス業の供給力不足は解消されなかった…

何故かといえば、お金自体は価値(=GDP)を産み出さないからだ。我々は供給能力以上の消費や投資は出来ない。どれほどお金があっても、島の供給能力以上のサービスの提供はできない。お金の増発には意味が無いのだ。

価値を生み出すのは「労働」のみだ。だからGDPは①労働投入量(どれだけ働いたか)、②資本ストック(投資した蓄積。インフラ/オフィス/パソコン/生産機械など)、③生産性(1人あたりの効率)で計算される。これからも「今まで投資してきたモノを使って、どれだけの時間を、どれだけの効率で働いたか。」と言うことなので、結局は人の手と頭による「労働」がGDPだ。決して「お金(金融資産=金融負債)」それ自身で付加価値を作り出しているのでは無い。