“まことに小さな国が,開化期を迎えようとしている。”これは有名な司馬遼太郎さんの著書「坂の上の雲」の冒頭の書き出しだ。明治維新によって初めて近代的な「国家」というものを持った日本人が、コメと絹の他に主要産業のないにも関わらず、ヨーロッパ先進国と同じ海軍や陸軍を持ち、ロシアと対決する「日露戦争」を描いている。
この中で司馬さんは、「初めて国家を持ち国民となった痛々しいばかりの昂揚が分からなければ,この段階の歴史は分からない。」と言い、更に「社会のどういう階層の,どういう家の子でも,ある一定の資格をとるために必要な記憶力と根気さえあれば,博士にも,官吏にも,軍人にも,教師にも成り得た。 この時代の明るさは,こういう楽天主義から来ている。」とも語っている。
明治維新を迎えてから僅か37年で、ヨーロッパの大国の一つロシアと対決し、バルチック艦隊を滅ぼすという奇跡を起こした。
もし当時にGDPという指標があったとしたら、この期間の成長率はどのくらいだったのだろうか? 正直、想像もつかないが、日本の戦後高度成長期を遥かに超えるレベルだったと思う。
痛々しいばかりの昂揚と楽天主義が、経済に奇跡的な成長をもたらした。まさに「景気は気から」という経済の本質を見抜いた格言の、歴史的な証左だと思う。
