デジタル赤字と同様のことが以前もあった。それは東日本大震災の後で、原発が停止しエネルギー輸入額が大幅に増えた(2011年+2.3兆円、12年+3.1兆円、13年+3.8兆円)時だ。マスコミでは「エネルギーコストについては大損」「原発停止で追加燃料費大幅増加で日本経済に深刻なダメージ!」などの記事が躍った。

これはデジタル赤字と同様で、要は日本が「損」をしていると言うものだが、これは「貿易黒字=日本から海外への投資、貿易赤字=海外から日本への投資」ということを理解していないことからくるニセ経済学だ。

ここで少し「国際収支表」について理解する必要がある。国際収支表とは複式簿記でモノ・サービス(実物)とカネ(資本)のやり取りを同時に記帳する収支表で、経常収支黒字(赤字)額=金融収支黒字(赤字)額となる。簿記なので当然、左右(実物と資本/経常収支と金融収支)は1円単位でピタリと合う。合わなければ計算が間違っている。

例えば2022年の経常収支は、9兆1471億円(※資本移転/誤差を含む)で、金融収支も9兆1471億円となっている。当然、左右は1円単位でピタリと合う。

ただ国際収支表についてはもう少し説明が必要だ。それは、金融収支の中で、海外の会社の株式取得や国債の売買、為替トレードなどの金融取引は、カネ(資本)を国内に持つか、海外に持つかの違いで、その主体(個人や企業)の資産自体に変化は無い。その為、金融収支の中で相殺されている。

しかし、この金額が莫大な金額になっており、2022年時点で1日あたり7兆5000億ドルと貿易額600億ドルの125倍!にもなっている。現在は貿易(実物取引)ではなく、資本取引が主役の時代となっているのだ。