日本の社会保障が100点満点だと言っているわけではない。特に医療や介護の部分には問題だと思う点が多い。しかし戦後の貧しかった時期に皆保険・皆年金を導入し、それを磨き上げてきたことは、世界と比較しても十分に賞賛に値する。
人間の営みは今も昔も変わらない。赤ちゃんとして生まれ、家族や地域に育てられ、成人してから一生懸命働き子供や高齢者を支え、高齢になってから又支えられる側に回る。社会保障制度がなかった時代、例えば江戸時代も平安時代もこの構造は変化していない。ただ現代は社会保障制度のおかげで、より平等に、より全ての人がカバーされるようになった。
日本もこの社会保障制度が確立されていなかったら、アメリカのような剥き出しの資本主義の中で、極少数の大金持ちと、多くのセーフティネットから漏れる貧しい人々が生まれていた可能性があった。私はそんな社会が良いとは全く思わない。
ただ日本国民には、日本の社会保障制度の素晴らしさが全く伝わっていないことが、私には残念で仕方ない。この良さが伝わっていれば、将来に対する不安が大幅に軽減されたはずだ。
景気は「気」からは経済の本質を見抜いた格言だ。この社会保障制度があれば、将来の不安がなく、色んなことにチャレンジできるはずだ。しかし全く伝わっていないため「失われた30年」が生まれてしまった。その意味で伝える側の責任は非常に重い。しかし今からでも遅くはない。中学生くらいに分かるように簡潔にし、授業でも日本の「皆保険・皆年金という偉業」を教えてほしいものだ。
