何度も言うが、金融資産と金融負債というのは「帳簿」の中にだけ存在する幻の資産と負債だ。だから消える時もあっという間で、増える時もあっという間だ。

バブル崩壊期の金融資産1989年4527兆円が1990年には4456兆円へと71兆円減り、リーマンショックの時には金融資産2007年6006兆円が2008年には5590兆円へと416兆円減った。そして16年後の2024年時点では1京0186兆円へと4596兆円も爆増した。

そこで重要なことは、金融資産と同額だけ金融負債も変化したことだ。金融資産と金融負債を足した金額は必ず「ゼロ」となる。それを考えるとバブル時も「ゼロ」、バブル後も「ゼロ」で実質的に何も変わっていない。

周りを見回しても道路や鉄道などのインフラ、生産設備、オフィス、住宅などの実物は何も変わってない。国富は確かに評価額が変化(バブル崩壊後1990年3531兆円が1994年3150兆円まで381兆円減少。土地価格下落が主因。)するが、その実物自体は何も変わらず、ずっとそこに存在している。当然、人間も変わらず存在しており、これも変わっていない。失業者は増えたが「帳簿の書換え」が上手くいっていれば、これも無かったはずだ。

ではバブルが弾けて一体何が変わったのか? 変わったのは熱狂が剥がれ落ち、未来への期待が大きく萎んだ。「景気は“気”から」と言うが正にその通りで、変わったのは唯一「人間の心理」だ。