世界で最も大きな権力を持っているアメリカ大統領が、無知だというのは本当に悲劇だ。Make America Grate again? これはアメリカが偉大な国ではないことを前提としている。確かに格差や分断など、アメリカには多くの問題があるが、経済的に見るとアメリカは、1970年代から1980年代前半のスタグフレーションに苦しみ、死にかけの病人のような状況と比較すると、確実に大きく偉大になった。

これは世界が繋がり、分業と交易で豊かになったからで、中国の勃興がグローバリゼーションを実現させた。そして、その果実を最も享受しているのがアメリカだ。

トランプはアメリカの貿易赤字が大きいのは、アメリカが他国より搾取され続けてきたと証拠だと言うが、これは国家の貿易赤字を、企業や家計の赤字と同じだと考える「典型的なニセ経済学」だ。

何度も述べてきたが、貿易赤字は企業の赤字とは全く違う。貿易赤字とは「他国が自国に投資をしてくれたこと」を表している。アメリカは世界でダントツの対外純債務を抱えている。ではアメリカは借金で困っているのだろうか? 答えはNOだ。アメリカの巨額の対外純債務は、アメリがが借金で困っていることを表しているのではなく、他の国が競ってアメリカに投資していることを表している。

確かに債務というと負のイメージがあり、直感的には分かり難いが、国家の対外債務は、実際は借金ではなく、他国よりの国内投資のことだ。そして他国が投資をしてくれることで、更に経済成長し、GDPが増え、国民が豊かになっているのだ。

「貿易黒字と貿易赤字」自体には何の意味もない。交易を行った結果として、経済が成長したかどうか、GDPが成長したかどうかのみが意味を持つのだ。