少しお金の話ばかりしたので、基本に戻って食料とエネルギーの話をしたい。

一般に日本の食料自給率は非常に低いという認識があると思う。それは農水省が危機を煽るためにカロリーベース自給率という独特な方法を発明したからだ。今ではその批判が高まったために、生産額ベースも合わせて表記するようになっている。2019年の食料自給率ではカロリーベース38%、生産額ベース66%となっている。その差は非常に大きく、農水省の危機を煽りたい意図が透けて見える。

よくマスコミで「人口が増え続けているので食糧危機が来る」という論調を見るが、全くの見当違いだ。事実は「食糧が大量に取れるようになったから人口が増えている」だ。因果関係の順序が逆になっている。現代のフードロス(生ゴミを含まない純粋な食糧廃棄)は13億トンと、世界の食糧需要40億トンの1/3にも上っており、毎年大量の食糧が廃棄されている。

この原因は、フランスで1950年代に始まる「緑の革命(化学肥料:窒素投入)」により、単位面積当たりの収穫量が飛躍的に伸びたことが、まず第1に挙げられる。緑の革命で穀物単収は7.5倍に増えたが、人口は1.5倍に過ぎず、大量に穀物が余り出した。

また第2の原因は、各国が自国の安全保障のために自給率を高めるため巨額の補助金(EU予算の一番大きな支出はこの農業補助金で全体の1/3以上)を出し農業を保護しているからだ。保護主義の下ではスミスの「神の見えざる手」は作用せず巨大な無駄が発生する。