人口問題を研究している荒川和久氏は、「晩婚化で出生率が下がったのではなく、若年層の未婚化が原因だ」と言っている。
既婚者の女性が、生涯に出産する子供の数を表す「完結出生児数」という指標がある。この指標は「合計特殊出生率」と違い、非常に安定している。最近は1.94程度まで低下してきたが、人工妊娠中絶を加えると、人口維持に必要な2.07を超える水準で維持している。ではなぜ合計特殊出生率とこれ程の差が出てくるのだろう?
原因は、合計特殊出生率は「世代人口(15〜49歳)全ての女性を母数としている」からだ。そこには荒川氏が指摘している未婚の女性も入っている。だから一人の母親が産む子供の数は変わらないのに、未婚の女性が増えたので合計特殊出生率が低下しているということだ。
そこから分かる課題は、「如何にして一人にたくさん産んでもらうかではなく、如何にして婚姻率を増やすか」ということだ。だから、今の子供手当に始まる「異次元の少子化対策」は「課題の設定」が間違っており、成果が出なくて当然だ。
実際に1980年からの40年で、20代の初婚達成率が大幅に減少した。30代以降の達成率がほぼ変化が無いことは、「晩婚化ではなく、未婚化」を意味している。
荒川氏は「若者は結婚しなくなったのではなく、結婚できなくなった」のだと言っている。この状況が顕著になったのは1995年くらいからで、バブル後の就職氷河期と一致するという。
経済は人の一生に大きく影響を与える。バブルの処理を適切に行っていれば、ここまで酷い状況は無かったのかもしれない。銀行の罪は非常に重い。