次にアメリカについて見ていきたい。
アメリカは確かに世界最強の国家だ。それに疑いの余地は無い…果たしてそうだろうか?
日本が失われた30年と呼ばれてきたこの30年間は、確かにアメリカが最強の国家であった為、それが固定観念となり、アメリカにも浮き沈みがあったことを多くの人々が忘れてしまっていると思う。少し遡って見てみたい。
第1次世界大戦終了時、ヨーロッパ各国が戦争で大きく傷つく中、アメリカは逆に大きく繁栄する。1914年には△35億ドルの債務国だったのが、戦争終了時の1919年には+125億ドルの債権国になっていた。そして1920年代はフーバー大統領(任期1929〜33年)が1929年1月の就任演説で「今日、われわれアメリカ人は、どの国の歴史にも見られなかったほど、貧困に対する最終勝利の日に近づいている。」と語るほど、繁栄を謳歌していた。
それを牽引したのはフォード社に代表される自動車産業、ゼネラル・エレクトリック社に代表される電気産業、それに建設ブーム、海外投資及び貿易であった。チャップリンの映画「モダン・タイムズ」でも有名になったフォード社のベルトコンベアを利用した効率的な生産方法は、大量生産と大量消費を可能にした。工業生産は1919年から29年に64%も伸び、失業率も3%台と完全雇用状態で、空前の繁栄をみせ、これは永遠に続くものと感じられた。
しかしフーバー大統領の「貧困への勝利演説」から僅か数ヶ月後の1929年10月にウォール街の株式暴落に端を発する「世界大恐慌」を引き起こし、世界を巻き込んでドン底へ突き落とす。そして第2次世界大戦へと突き進むことになる。その意味でウォール街の罪は非常に重い。
