そして第2次世界大戦後にアメリカは、再び巨大な繁栄を謳歌することになる。大戦で世界で唯一国内の都市が傷つくことの無かったアメリカは、鉱工業生産の6割、金保有の7割、自動車生産の7割を占める世界で唯一の経済大国となった。そしてブレトン・ウッズ体制でドルと金を1オンス=35ドルに連動させ、ドルを基軸通貨とする固定相場制へと移行する。その結果、世界中がドルを欲しがり、アメリカの製品を購入することになる。
そして1960年代はケネディ大統領(任期1961〜1963年)の元、「ニュー・エコノミクス」と言われる「積極的な財政支出で経済成長と完全雇用を実現する政策」が取られ、GDPは6%という高い成長率と、失業率3%台という完全雇用状態が実現される。そして1963年にはジョンソン大統領が「偉大なる社会の実現」を宣言する。しかし、ここからまた歯車が狂い出す。
フーバー大統領の「貧困への勝利演説」の時も同じだが、人間は絶頂期で道を誤る。ジョンソン大統領は1964年から「偉大なる社会の実現」のために、巨額の財政支出を伴う医療扶助政策をスタートさせ、更に「自由と民主主義を守る」ため、これも1964年からベトナム戦争に直接介入する。
ニュー・エコノミクスで完全雇用の状態の労働市場では、医療と戦争の巨額の財政支出のために労働力をはじめとした供給サイドが更に逼迫する。需要>供給となれば、当然の結果としてインフレになる。
そしてアメリカはここからインフレに苦しむことになるのだが、更に1973年に起こったオイル・ショックで不況が加わり「不況なのに物価上昇が止まらない」スタグフレーションとなり1980年代前半まで、アメリカの栄光は完全に過去のものとなっていた。