ここから私の故郷であり、日本人にとっては、お隣の国でありながら遠い国である中国(中華人民共和国)を詳しく見ていきたい。アメリカのことはよくニュースにもなるので知っている人は多いが、中国のニュースは情報量が少なく、しかも悪いニュースか、もしくは悪くねじ曲げられたニュースしかない。
日々日中双方の情報に接していると、同じ事象についてのニュースであっても、極端なほど双方の見解が違うことには本当に驚きしかない。中国で最近流行りの言葉に「内巻(ネイジュエン)」という単語がある。文字通り内側にどんどん入り込んで行くことで、複雑化、奇異化、非生産化する所謂「ガラパゴス化」を指す言葉だ。その状況は日中双方に起こっている。
私は現在の中国が西側世界から孤立していく状況は非常に危険だと心配している。なぜ双方がこんなに偏った情報で、内側だけを向いて、お互いが離れて行くのか、歴史の教訓はどこへ行ったのか?
内向きの情報は指数関数的にお互いの憎悪やナショナリズムを増幅する。これが危険なことは日本人であれば身に沁みて理解できるはずだ。なのに、メディアやネットに溢れるのはナショナリズムを増長するような情報ばかり。自分らは正しくて相手が間違いだと。
下僕は1994年に初めて中国を訪れたそうだ。その時は上海の虹橋空港に到着後、いきなり荷物を数人に持たれて、そのまま白タクに乗せられ、目的地とは全く別の場所で降ろされ金を取られたらしい。その時は、とんでもない国に来てしまったと、心から後悔したそうだが、それから約30年が経ち、この国は全く別の国へと進化した。
人も国も変わる。我々は固定観念を捨て、もう一度お互いに向き合い、「内巻」の呪縛から抜け出す必要がある。二度と過ちを繰り返さないために。