ここで少し香港について触れたい。中国の発展にとって香港の存在は非常に大きい。だが中国と香港がどういう関係になっているのかを理解していない人が多い。

香港は今でこそ洗練されたイメージがあるが、中国大陸が眠っていた50年代から70年代にかけても一貫して資本主義の荒波の中で存在し続けてきた猛者で、九龍城に代表されるような混沌と暴力、汚職、ドラッグ何でもありの世界で生き続けた都市だ。

アヘン戦争(1840~1842)でイギリスに割譲されてから150年後の1997年7月に、やっと中国に返還されることになった。しかしそれからも50年間は「一国二制度」として香港の資本主義体制を維持することになっている。

これは中国政府にとっても非常に都合の良い環境だった。香港を資金流通のバッファーとすることで、国内の市場を海外の金融資本に好き勝手に荒らされることなく、しかも資本主義の恩恵も受けられるという制度だ。ただこの制度は中国を良く知らない海外の人にとっては分かり難く、よく聞く「アメリカの利上げで香港も中国も大変だ!」という誤解を招くことになる。

まず理解の第一歩として、中国も香港も同様に固定相場制を採用しているが、実体は全く異なる。

中国の人民元と米ドルや円の相場が常に変わるので、中国を変動相場制の国だと思っている人がいるが、それは間違いだ。中国は通貨バスケット制を採っているので、いろんな通貨のレートを加重平均したレートになっている。なので米ドルに対して安くなって、円に対して高くなるなど変動するが、加重平均すると固定相場になっている。しかし香港ドルは、その名の通り「ドル」で、100%ドルにペッグしており、米ドルの兌換券のようなもので、1ドル=7.8香港ドルで固定されている。