「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」。経済の語源となった「経世済民」の本来の意味だ。なので「経済」とは本来は政治や行政を意味するものであった。
だが今の政治は民を救っているだろうか? トランプ大統領の登場以降グローバリゼーションに大きな翳りが見え始めた。無知な民衆を煽って貿易が戦争であると焚き付け、ナショナリズムという「内巻」を起こした。それは民主党のバイデン大統領になっても変わらず「内巻」は加速してデカップリングの時代へ入った。不幸にも新型コロナパンデミックが世界の分断の加速器となってしまった。第1次世界大戦後の和平への流れを1929年の「世界大恐慌」が180度変えてしまったように。
デカップリングが進行し何が起こったのかについては現状を見れば一目瞭然だ。アメリカやヨーロッパの「インフレ」と中国の「デフレ」だ。
ウクライナ戦争によるエネルギー価格高騰が原因の一部だが、構造的な変化がもっと大きな原因だ。アメリカはグローバリゼーションの恩恵を受け、自国の総供給力以上の消費を享受してきた。スミスやリカードが言っていた通りの豊かな世の中だ。しかしデカップリングが進行し自国の消費を支えきれなくなり、当然の結果としてインフレになった。
アメリカのFRBパウエル議長は2022年時点でこのインフレは一時的なものだとして金利引上げのタイミングを逸してしまい急激なインフレを招いた。その後急激な利上げを行い2024年秋時点でインフレはかなり収まってきたが、その後ろには既にリセッションが迫っている。