そもそも貿易とはなんなのか? 本当に貿易は競争であり極端な言い方をすると戦争なのだろうか?

「黒字は得で、赤字は損。」確かに企業や家計ではその通りだ。しかし「国家の貿易黒字は得で、貿易赤字は損。」は全くのデタラメだ。この事実は直感と異なるのでなかなか理解しがたい。ちょうど量子力学のように、説明は理解するけど肌感覚として理解出来ない。だって黒字は良くて、赤字は悪いは常識でしょうと…

経済学の中には幾つか「直感と異なるので理解しがたい事実」がある。貿易黒字・赤字問題はその代表例のようなものだ。

ノーベル経済学賞を取得したポールクルーグマンは「貿易が国と国が勝つか負けるかの競争だというのは、経済学者が200年間懸命に考えて研究してきたことを全く無視する俗流経済学だ」と断言している。

貿易黒字とは、国内の総生産以下に消費を抑えて、差分を海外投資(海外の株や債券、土地建物を購入)した結果だ。逆に貿易赤字は他の国が自国に投資してくれたということになる。

だから世界ダントツの対外債務国(△2,805兆円)のアメリカは、「借金」で困っている訳では無い。対外債務は借金では無く、外国が投資(国債、社債、株式、預金、土地建物)してくれた金額のことだ。現状は世界中が競ってアメリカに投資しているのだ。

このように貿易黒字=海外投資、貿易赤字=投資受入なので、それ自体には良いも悪いも無い。結果としてGDP(国内総生産)が増えれば良いのだ。そして巷で言われている借金大国アメリカはGDPが増え続けて、どんどん豊かになっている。