繰り返すが貿易の黒字赤字には何の意味もない。黒字だからGDPが成長するわけでも、赤字だから不況になるわけでも無い。アメリカは1992年から経常赤字(貿易赤字)が続いているが、ご存じのように高い成長をしている。アメリカは基軸通貨国で特別だと言う人もいるが、そうでは無い。
イギリスやニュージーランド、オーストラリア(2019以降経常黒字)なども1990年以降ずっと赤字だが、高い成長率を維持している。ニュージーランドやオーストラリアは農業国で遅れていると思われがちだが、2023年末時点で一人当たりのGDPはニュージーランド47,537ドル、オーストラリア65,434ドルと、日本33,806ドルよりずっと高い。貿易黒字赤字がGDP成長と全く関係無いことが分かると思う。 1990年時点では日本の方が高かったのに、この30年で完全に抜き去られてしまった。
なお貿易黒字赤字問題とは少し逸れるが、農業国だから生産性が低くて、工業国だから高いというのもニセ経済学の典型だということも、この結果から分かると思う。オーストラリアやニージーランドのように国内に自動車産業や半導体産業のような先端企業が無くても、国は十分に豊かになれるのだ。
経済学の父であるアダム・スミス(1723~90年)は色んな教えを残してきた。有名なのは「神の見えざる手」だが、私が最も感銘を受けたのは「分業と交易を行えば世界全体が豊かになる」と言う教えだ。
ある国は工業にある国は農業に特化分業し、交易をすると、双方が豊かになる。まさにスミスの言う通りで、世界のGDPは世界貿易額の増加と綺麗に一致するように大きく豊かになってきた。
分業と交易で世界を豊かにする。今後も守る必要のある大切な教えだ。