良い本に出会った。藤井一至氏の「大地の5億年」という本だ。藤井氏は北極圏から熱帯雨林まで世界を飛び回り、「土」の研究をしている。土の研究というと地味な感じがするが、地味な物の中に「本質」がある。

地球は誕生してから46億年経つが、土が出来始めたのは5億年ほど間からで、41億年間は地球に土が無かったらしい。では、そもそも「土」とは何なのかというと「岩石が風化した砂と粘土に、腐った動植物の遺体が混ざった物」ということだ。だから太陽系では地球以外に「土」は無い。火星や月にあるのは砂と粘土の堆積物であり、「土」ではない。

そして5億年前に最初に岩石だらけの地上に上陸したのは、地衣類(カビと藻が共生したもの)とコケだった。彼等が最初に上陸した時、地上には岩しかなく、生存に必要な栄養分(リン、カルシウム、カリウムなど)を確保すことが非常に困難だった。そこで彼等は栄養分を得るために、光合成で作った貴重な糖を「有機酸」に変換して、岩石を溶かして栄養分を獲得していた。なんとも逞しい限りだ。

今でも京都のお寺の庭園などで、「土」のない岩の上に彼等を見かけることがあるが、そこには5億年間変わらない営みがあり、お寺の歴史よりずっと長い。お寺より彼等に手を合わせるべきだ。彼等が今の地球を創ってくれたのだから。