ISバランスにはもう一つの顔がある。Iを右辺に移動し、
S=I+(G−T)+(EX−IM)
左辺のSは貯蓄で、右辺がその貯蓄を借りた主体を表している。すなわち、I=企業と個人の投資、(G−T)=政府の財政支出、(EX−IM)=海外の人の投資ということだ。
Iは主に企業が行う投資で、銀行融資や社債発行などで借りている。個人の住宅ローンもここに入る。
(G−T)は政府で、数字がプラスの場合は、国と地方政府の合計が財政赤字で、公債(国債・地方債)を発行して資金を調達している。 2022年は(政府152−税金120) =32兆円なので、財政赤字で公債を32兆円発行して資金調達している。
(EX−IM)=海外の人だが、現在は(輸出123−輸入146)=△23兆円の貿易赤字だが、これは海外の人が投資をしてくれたことを表している。日本人は国内の総供給量以上の支出をしているということだ。注意が必要なことは、前にも説明したが貿易黒字・赤字自体には何の意味もないことだ。結果としてGDPが伸びたかどうかが大切なのだ。
そして、ここから言えることは、貸した総額「S」=借りた総額「I+(G−T)+(EX−IM)」ということだ。
我々国民の貯蓄(S)を銀行を通じて、企業や政府にお金を貸しているので、企業や政府から見たら負債(=借入金・国債)である金額は、逆から見れば国民の資産となる。
2022年も政府の借金(公債残高)が32兆円増えたということは、国民の資産が32兆円増えたと同義語だ。実際に政府の借金(=政府金融負債)と国民の資産(=家計金融資産)は、1994年から2023年にどちらも約1000兆円増加している。このように「ISバランス」を理解するとマスコミのニセ経済学に騙されなくなる。