現在の世界ではEV自動車(BEV+PHEV)に対する見方が大きく変わってきた。EUは脱炭素社会を実現するために、2035年までにエンジン自動車の新車販売を禁止する実質「EV義務化」を掲げ、EVへの転換を強力に推進してきた。

EUではEVの販売が2023年に新車販売シェア22.0%と、EVへの転換も順調に見えていたが、2024年にはEV販売台数が減少に転じた。特にEU最大の市場であるドイツは2023年にEVの補助金を停止したことで、EV販売台数が大きく落ち込み、2024年は2022年から△31%も減少した。その結果EVに全振りしていたフォルクスワーゲンなどは大打撃を受け、国内工場の閉鎖を検討している。メルセデス・ベンツも2030年までに完全EV化を目指していたが、これを撤回した。

アメリカはテスラのイメージでEVが普及しているように思うが、2023年で新車販売シェアは9.5%しかない。ハイブリッドも7.7%程度で、アメリカは道路事情などもあり、圧倒的にガソリン車が多い。しかもトランプ再選でこれからもガソリン車の勢いは衰えそうもない。

しかし世界でただ一国だけが、急速にEVの普及を伸ばしている。それが中国だ。2023年には38.0%で、直近では45%を超えている。なぜこれほど増えているかというと、圧倒的に性能が上がったことと、価格が低下したことが要因となっている。特にBYDの価格は8~18万元程度だが、これは他社と比較して5~10万元は安く、しかも高性能であるため、圧倒的な競争力をもっている。

そして世界の車市場で一番大きいのは中国だ。だからこのマーケットを抑えるかどうかで勝敗は決まってくる。2023年の世界のEV販売台数は約1400万台で、このうち60%が中国、25%が欧州、10%が米国、そして僅か1%が日本で販売された。圧倒的に中国が一人勝ちで、すでに製造大国の地位を確立していると言える状況だ。