そもそも中国は社会主義の国家であるので、資源、生産設備、企業、土地建物などに「個人所有」という概念が無かった。そこに市場経済を持ち込み「個人所有」という概念が生まれると、トンデモない価値が一瞬にして生み出される。本来は大きな価値があるのに、共用物であるために価値としてカウントされなかかった物に、いきなり「値札」が付いたわけだ。その衝撃は計り知れない。そしてその価値は一般的に権力者により所有されるので、想像も出来ないスーパーリッチが誕生する。
これは1980年後半のソビエト連邦崩壊後のロシアやウクライナ等の旧ソ連諸国でも同じことが起こり、オリガルヒと呼ばれるスーパーリッチが数多く誕生している。周永康も同じだし、決して彼一人では無い。ただ逮捕されていないというだけだ。
更に「所有権という概念」が生まれると、商品の取引量は当然ながら爆増する。その結果、社会が急速に発展することになるのだが、こちらも当然ながら、その過程で格差が急拡大する。社会主義に市場経済を持ち込むとは、それ程の「劇薬」ということだ。
私は上海で生活していて、中国は日本など比較にならない「資本主義国家」だと肌身で感じている。この極度の行き過ぎを決死の覚悟で変えようとしているのが習近平氏だ。海外での評判が良く無いのは理解しているが、正直な感想として「彼以外でいったい誰が出来るのか?」と思っている。今やろうとしている改革は、それほど困難なことだ。我々はお隣の国であるし、もう少し暖かく見守ってやるべきだと思う。