下僕の故郷長崎の端島(通称:軍艦島)を舞台にしたドラマが放送していた。端島は炭鉱で栄えた島で、日本で初めてのコンクリートマンションが建設され、テレビの普及率はほぼ100%、人口密度は当時の世界一など、日本の中で最も豊かな島だった。

そこで採掘されていたのは瀝青炭と言われる上質の石炭「ブラックダイアモンド」で、北九州の八幡製鉄所などで、製鉄用のコークス(発熱量が高い蒸し焼き石炭)に使用され、日本の高度経済成長期を支えてきた。 まさに「鉄は国家なり」だ。

しかし端島の石炭は海底のさらに下、地下約1000Mもの深い地層から採掘していた。だから採掘現場は気温35度、湿度95%という超過酷な場所で、時折ガスが噴出するなど、常に「死」と隣り合わせの作業だった。なぜそんな地下深くに良質の石炭があるかといえば、それは石炭の生い立ちに関係している。

石炭は恐竜が誕生した2億年前の「ジュラ紀」よりも更に昔の、3.5億年前から3億年前のシダ植物と裸子植物の遺骸からできている。この時代を考古学では、大量の石炭が生成された時期のため「石炭紀」と呼んでいる。

石炭は、植物を起源とする化石エネルギー資源なので、大昔(数千万年前~数億年前)に植物が湖や沼の底に積み重なったものが、地中の熱や圧力の影響を受け、炭素が濃集して石炭が生成される。

だから良質な石炭は、地中の深くで圧力と熱が高い場所、端島の地下1000Mのような過酷な場所で生成されるのだ。しかし「ブラックダイアモンド」を命がけで採掘していた端島も、石油へのエネルギー転換の中で、1974年に炭鉱を閉山することになった。