石炭紀の前には空気中の二酸化炭素(CO2)濃度は現在の10倍以上もあった。しかし石炭紀を迎え空気中の二酸化炭素濃度は急速に減っていった。これは微生物を含む「炭素循環」のバランスが崩れたために、植物が取り込んだ炭素(CO2とH2Oを光合成で糖C6H12O6に変換)が分解されず、堆積していったことが原因だ。その分解されなかった植物の遺骸が現在の石炭になっている。
植物が分解されなかった原因は、植物が競争に勝つためと、自分を守るために、木質物質「リグニン」を生成するように進化したからだ。リグニンは植物の主成分である「セルロース」とは大きく異なる。リグニンは非常に複雑で生成するのに大きなエネルギーが必要だが、樹木の強度を高めるために植物が生み出した。
しかしリグニンは複雑過ぎたため、石炭紀には分解できる生物が存在しなかった。その結果、植物が分解されず堆積し、現在の石炭になった。それと同時に、空気中のCO2が急減することになった。
空気中の二酸化炭素が減り続けると生物は生きていけない。現在はCO2を悪者扱いしているが、すべての生物はCO2から造られており、減りすぎると生態系が維持できなくなる。
石炭紀には急激なCO2の減少のために生態系の危機が迫っていた。そして、その危機的状況の中に最強の分解者「白色腐朽菌」が生まれた。石炭紀には分解しきれなかった植物の遺骸を、どんどん分解し、空気中に二酸化炭素を放出する「炭素循環」が復活し、地球の生態系バランスが取れるようになった。この白色腐朽菌とは、鍋料理でお馴染みの「キノコ」のことだ。キノコが地球の生態系を救ったのだ。