歴史的に見てもインフレはしつこく長く続く。治ったと思ってもふたたび再燃する傾向が強い。これは消費癖をなかなか抑えられない人間の性と、デフレと同じで将来のインフレ予測がインフレを自己実現していくからだ。インフレは当然多くの人、特に低所得者層を苦しめる。しかも景気にストップが掛かっても、デカップリングが続けば構造問題は解決されないのでインフレは収まらない可能性が高く、最悪の場合スタグフレーション(不況下のインフレ)を引き起こす。

アメリカは1965年〜1973年まではインフレ、オイルショックの1973年以降はそれに不況が加わりスタグフレーションになり1982年ごろまで苦しんだ経験を持つ。

当初のインフレを招いたのは、1963年からのベトナム戦争と、1964年からの「偉大な社会」実現のための福祉プログラムによる巨額の財政支出だ。1960年代中頃のアメリカは完全雇用状態だった。そこに巨額の財政支出をしたので労働市場を始めとした供給サイドは更に逼迫し、当然の結果としてインフレになった。

今回もよく似ている。今のアメリカは失業率3%台という完全雇用状態の中で、中国とのデカップリングを進め、供給能力が追いつかないのに、海外から国内に強制的に工場を移転させ、更に労働供給サイドが逼迫しインフレが続く。それにイスラエルとガザの問題で、アラブ諸国が団結したら…いつか来た道だ。

私をはじめ多くの一般人は政治に興味は無い。ただただ「経世剤民」…経済を理解して、世を経(おさ)め、民を済(すく)う。そういう世の中であって欲しいと願うだけだ。