政治は「常に敵を求める」という意味で非常に厄介だ。本来は東西冷戦が終結した時点で、NATOも解散すべきだった。しかしそうはならず、逆に旧ソ連の国々を引き込みNATOは大幅に勢力を増した。そして現在でも「仮想敵国」はロシアだ。
ロシアの側から見てみると全く違う景色が見える。心理学的にも「損失」は「利得」の2倍以上の痛みを持つ。ロシアから見れば旧ソ連の国々の寝返りは、煮え湯を飲まされるような心境だったはずだ。そして今回は最も近い関係のウクライナが寝返ろうとしたのだ。これは許容できたことなのだろうか?
身近な例で考えて、自分の仲間だと思っていた友達が、対立するグループに入ったらどう思うだろう? 戦国時代でも裏切者は厳罰に処されてきた。それは類人猿の時代からDNAに刻む込まれたもので人間の本能だ。社会はその人間で成り立っており、政治はその発露だ。
独立国だから何をしても自由だと言うのだろうが、確かに自由だが、相手がどう考えるかも自由だ。そしてその自由が戦争を生む。
私に言わせれば、なぜウクライナは「NATOに加盟する」という選択肢しか無かったのだろうかと非常に残念に思う。その結果、何万人もの国民が犠牲になり、領土も大きく占領され、国力は疲弊してしまった。
ヨーロッパにはスイスとオーストリア、それに旧ソビエト連邦であったトルクメニスタンという良いお手本がある。この国々は「永世中立国」という立場を選択した。私はウクライナもこの道を選択すべきだったと考える。そうすれば戦争という最悪の結末は避けられたはずだ。