この島の政府は皆んなに1億円づつ配ったので、島の住人の資産は100億円になった。その反対に島の政府の借金は100億円になった。忘れていけないのは「誰かの債権は、必ず誰かの債務」ということだ。そしてこれが今の日本の姿だ。政府が多くの借金(=金融負債)を抱えて、国民が多くの金融資産を持っている。

では政府の借金が10倍の1000億円になったらどうなるのだろうか? 答えは「国民の資産も1000億円になる」だ。

言い換えると「政府の借金が増えれば、国民の財産も増える」。逆に「政府の借金が減れば、国民の財産も減る」ことになる。政府の借金は逆から見れば国民の財産ということだ。

では島の人口が減りつづけて、人口が1人になったらどうなるのだろうか? 答えは「政府と国民が1つになり、借金も財産も無くなる」だ。

これは「最後の日本人」と呼ばれる仮想設定だが、これからも金融資産と金融負債の本質が理解できる。帳簿上の幻の資産と負債だということが。

経済学では「どれだけ政府の負債が増えると暴落するのか?」は、分かっていない。それは「どれだけ国民の資産が増えると暴落するのか?」と、同義語だからだ。

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーは「債務残高÷GDP」を「的外れな概念」だと言っていた。経済学では「ストック(=債務残高)とフロー(=GDP)を分けて考える」ことが基本だからだ。

マスコミが「日本の国債残高がGDP比260%を超えたので、いつ暴落してもおかしくない!」などと言っているが、それは「日本国民の資産残高がGDP比260%に超えたので、いつ暴落してもおかしくない!」と言っているのと同じということだ。第一原理思考で考えると全くの的外れだ。