都市計画には2つの潮流がある。一つはル・コルビジェに代表される潮流で、彼が「輝ける都市論」で主張した「都市とは純粋な幾何学である。道は直線で格子状であるべき。区域はオフィス地帯、工業地帯、商業地帯、住宅地帯のように機能別であるべき。」という考えだ。ブラジルの首都ブラジリアは、輝ける都市論に基づき作られた都市だが、現在では「市民生活を送るには極めて不便」の烙印が押されており、「輝ける都市」は完全に曇ったと評されている。

しかし高度経済成長期以降、日本の多くの都市が、大建築家であるコルビジェの影響を受け、機能優先の合理主義的なゾーニング法で都市計画を実施してしまっている。

もう一つの潮流は、ジェイン・ジェイコブズに代表される「郊外化に反対し、都市の多様性を重視した街づくりをすべき。」という考え方だ。ジェイコブズは「都市が多様性を持つための条件(The conditions for city diversity)」として、4つを挙げている「①街区が短く、角を曲がる機会が頻繁に生じていなければならない。②年代や状態の異なる様々な建物が混ざり合っていなければならない。③用途が複数存在し、人々が異なる時間帯に外に出たり、留まったりしなければならない。④目的がなんであるにせよ,人々が十分に高密度に集積していなければならない。」と言っている。

そのジェイコブズの考えを体現したのが、アメリカのオレゴン州「ポートランド」だ。そこにパールディストリクトという地域があるのだが、とても素晴らしい街で、まさに「アーバンネイバーフッド」を体現している。パールは元々鉄道の操車場跡地で、何年も放置された「ブラウンフィールド」だった。それを地元のデベロッパーのホワイト社が取得し、行政と共に街づくりを行い、「世界で最もクールな街」と言われている。

パールは街区が60m(通常の都市は120m)と短く、全ての建物の一階部分は店舗やギャラリーに用途を限定し、上層部を住居やオフィス/ホテルとし、用途の複合化で街に賑わいと、十分な人口密度を確保している。そしてエリアにLRT(ライトレール)を通し、歩いて回れる街の構成となっている。まさにジェイコブズの思想通りの街だ。