金融とは一体何なのかを考える上で、1971年8月当時のニクソン大統領がドルと金の交換(金1オンス=35ドル)を停止した「ドル・ショック」を理解することは非常に重要だ。

第2次大戦後、ブレトン・ウッズ体制の下でアメリカの黄金期である「パクス・アメリカーナ」の時代が到来する。世界中が基軸通貨であるドルを欲しがり、そのドルでアメリカから物を買う時代で、世界貿易規模が拡大し、ドル需要も拡大した。

世界経済の拡大と共にドル供給量も増やさなければならないが、ドルは金とペッグしており、ドルを増やすということは金も増やさなければならない。しかし金の量は昔から五輪用プールの3.5杯分(17万トン)しかなく、量が増えない。

ロバート・トルフィン(1911~1993)が「流動性ジレンマ論」で指摘したように、アメリカの経常収支赤字拡大→ドルの供給増→ドルの信用低下、アメリカの経常収支赤字縮小→ドル供給不足→世界経済停滞となり、ドルの信用と世界経済の成長は両立出来ない。

そしてフランスをはじめとする多くの国々が、手元にある大量のドルが本当に金と交換できるのか疑問に感じてきた。当時アメリカの金保有残高はドル発行額に対して25%程度まで落ち込んでおり、諸外国のドルと金の交換要求に対応できず「ドル・ショック」が起こった。

その結果、世界は固定相場制から変動相場制に移行した。ドルは急落し、1ドル=360円から260円台になった。