最近よくフローとストックがごっちゃになった議論を耳にする。代表的なのは「日本の個人金融資産は2000兆円もあるのだから、それを1%(=20兆円)でも使えば、経済が活性化しGDPが成長する」とか「高齢者はお金を貯蓄しているだけなので、貯蓄を若者に回せば消費が増えGDPが成長する」などだ。

一見正しいように聞こえるが、実際は全くのニセ経済学だ。以前も説明したが、金融資産とは「貸しましたの記帳」に過ぎない。一方で金融負債は「借りましたの記帳」で、帳簿上の幻の資産と負債だ。そして金融資産と金融負債を足すと必ずゼロになる。

金融資産と金融負債は「ストック」で、GDPはその年の付加価値の合計なので「フロー」となる。そして「ストック」は既に何かに使われているお金なので、2度と使うことは出来ない。原理的に「ストック」は「フロー」に回ることは出来ないのだ。

しかし、一見すると「貯蓄(=ストック)を下ろして、10万円のパソコンを購入(=フロー)した」ように見えるのは何故だろうか?

それは、その反対側に「お金を稼いで(=フロー)、借金を返済(=ストック)している人」がいるからだ。要はこの人は消費(=フロー)を抑えて返済に回しており、それでバランスしている。だから一見すると個人(=ミクロ)では、貯蓄を下ろしてパソコンを買った「ストック→フロー」ように見えるが、社会全体(=マクロ)ではGDP(=フロー)が増えるわけではないのだ。

このマクロの動きは「直感」として分かりづらく、ニセ経済学が蔓延る原因となっている。