日本はここから「失われた30年」を経験する。未来への期待が大きく萎んだため、全ての人が自衛の行動を取った。家計も企業も銀行までもがカネを貯め込み、投資に資金が回らない…これはジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)が指摘した「流動性の罠」という「貨幣愛」の行動だ。
将来が不安なので流動性の高い貨幣を所有したがる自衛の行動で、「貨幣の価値が高くなる=モノの価値が下がる」状況、所謂「デフレ」へと陥ってしまった。特に土地や建物などはすぐに現金化出来ない=流動性が低いので誰も欲しがらなくなり、価格が下落した。
経済は多くの人間の行動で決定する。人間を動かすのは心理だ。「景気は“気”から」は経済の本質を見抜いた格言だ。しかし日本は、銀行による中小企業への融資貸し剥がし、橋本内閣での消費税増税、国債増発への財務省の脅し、若年層の就職氷河期、少子高齢化問題、年金制度崩壊問題…どれもこれも未来への期待を削ぎ落とす行動を取り続けた。
日本は経済学への本質的理解不足と保身や既得権益のために、経済学的には「絶対にやってはいけない」と考えられていることをやり続けた一方で、世界はこの30年で大きく発展した。ただ日本一国だけを取り残して。