最近「103万円の壁」が話題になっている。しかし実は色んな「壁」があって106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁…などがある。色んな「壁」があり過ぎて、何のことやら理解が追いつかない。

税には「3原則」と言われる「公平/中立/簡素」がある。公平は分かり易いように思うが、実は幾つかの軸があって、水平的公平(同じ収入の人は同じ税金)、垂直的公平(経済力の高い人に多くの負担)、それと最近は世代間の公平が特に注目を集めている。3つも軸があると、これらを合理的に整合させるのは簡単ではない。

そして中立というのは「税制が個人や企業の経済活動の選択を歪めないようにする」ことらしい。そして今回の壁の話は「税制が“働き控え”を誘発」しており、「経済活動の選択を歪めている」という「中立の問題」ということだ。

しかし何故その問題が起こっているかというと、3原則の「簡素」に課題がある。日本の税制と社会保障制度は魔宮のように複雑怪奇で、全く「簡素」ではない。

今回の問題も「103万円の壁」が問題だと「課題を設定」すると「壁の位置をどれ位にするか?」という議論になってくる。しかし結局「壁」は変更された位置に残る。インフレが進んだりすると、いずれ又「壁の位置」を議論することになる。どこかに線を引くと、必ず「壁」ができる。それでは問題は解決しない。

これは安宅和人氏が著書「ISSUE DRIVEN」で言っていた「課題の設定」を間違ったパターンだ。課題は「中立」ではなく「簡素」にある。