輸出入と為替レートが無関係で、輸出が増えれば輸入も増える(逆も同様)であれば、なぜワイドショーなどでこれ程騒いでいるのだろうか?
それは為替が国全体としては見ればフラットだが、国の中で儲ける人と損する人を生み出すからだ。
個別の企業を見ると円安が得な企業と円高が得な企業に分かれる。円安で得をする企業は輸出企業だが、日本の輸出額の90%は東証一部上場企業に集中している。だから日経平均は円安に反応して高値を付ける。アベノミクスの2013年には円が86円から105円へと18%も下がり、日経平均株価が9000円台から15000円台へと60%も上昇した。当然株価は為替だけで動いているわけでは無いが、2024年も1ドル=161円を超える空前の円安で、日経平均も33年ぶりにバブル後最高値を更新し、ついには4万2000円台を突破した。
トヨタ自動車は2023年度のグループ全体の決算で、売上は前の年度から21.4%増えて45兆953億円となり過去最高を更新し、営業利益が5兆3529億円となり、日本の上場企業で初めて5兆円を超えた。円安効果でボロ儲けだ。
日経平均に反映される東証一部上場企業は円安効果で恩恵を受けるが、忘れてはいけない事は「日経平均は日本全体の姿を表していない。」ということだ。
日本のGDPの78%は第3次産業(サービス業)だ、トヨタなどの製造業は20%に過ぎない。これからも日本が「モノづくり」の国でも無いことが分かる。そして第3次産業は輸出産業にはなり得ないので、円安の恩恵を受けることは無く、輸入物価が上がり苦しむことになる。
日本全体としてフラットだということは、中小企業から大企業へ利益を補填していることで、格差を拡大することになる。