この「④人口減少で将来世代の負担が上がり続ける!」は、高齢者1人を何人の現役世代で支えるかという図でよく見ると思う。1960年は11.2人で高齢者1人を支えていたが、2020年では2.0人になった。そして2050年には1.3人になるらしい。これを見ると「もう無理だ〜」と思ってしまう。
しかし大前提として、先ほど③で説明したように、現役世代の負担率は労使折半で18.3%(実質9.15%)で、今後増えることなない。高齢者が増えて、現在の「1人の高齢者を2人で支える」であろうが、1.3人や1人であろうが、負担が増えることはない。
そして見落としてはいけないのは「支えられるのは高齢者だけではなく、若者世代もだ」ということだ。若者世代を加えると1960年は1.8人で1人を支えていたが、2020年では1.4人で1人となり「11.2人が2.0人に減少!」のような極端な差はなくなる。実際に子供が成人するまでにかかる費用は約3000万円と言われており、年間150万円程度必要となる。これは現在の一人当たりの平均年金受給額140万円(年金支給額55.7兆円÷実受給者数3975万人)とほぼ同じ金額だ。それを考えると今も昔も実は負担は大きくは違わないのだ。
そして最後が「⑤将来は年金額が減少して老後資金が足りなくなる! 」というものだ。確かに年金の所得代替率(現役時代の年収と年金の比率)は現在の61.7%から50.8%に減る。しかし年金の受給開始年齢を遅くし67歳からにすると62.8%と現在の水準を超える。我々が忘れてならないのは平均寿命が伸びたことだ。1960年と比べると男性でも17年も延びている。福祉国家スウェーデンでは平均寿命が伸びた場合、就労期間を平均寿命が伸びた2/3だけ延長することになっている。16年なら11年間就労期間を伸ばし71歳まで働くことになる。もし現在で70歳までを現役世代とすれば、1.9人で1人を支えることになり1960年の1.8人を上回ることになる。
