ビッグテック企業の出現で、情報の獲得や発信が非常に簡単になった。そして現在、世の中には情報が溢れている。

その中で勝ち抜くため、フェイスブックやインスタグラム、YouTube、TikTokなどは、人間の承認欲求や視覚刺激、帰属欲求などを利用して、ドーパミン(人間の快楽報酬物質)を操ることで利用者数を拡大してきた。そして膨大な数の利用者から「薄く広く」利益を得ることで、莫大な利益を得ている。

これはメキシコ・マフィアがフェンタニルで行っていることと非常によく似ている。フェンタニルも人工物であるため、ヘロインなどと違い、非常に安価だ。ヘロインはケシを原料とするが、ケシの栽培には何カ月もかかり、広い土地を必要とする。そのため警察や軍隊に衛生画像などで摘発されるリスクが高い。一方でフェンタニルは、原料の化学物質を入手すればラボや小規模な工場で製造でき、簡単で摘発されるリスクも低く、マフィアにとっては都合の良いことばかりだ。

トランプがメキシコ国境に莫大な金を投じて壁を設置したが、フェンタニルは鎮痛剤などに偽装されトラックに積まれて、堂々と国境を渡ってくる。検問所には毎日20万台以上の車両が通過しており、物理的にも取り締まりは不可能に近く、フェンタニルが摘発される量は僅かに数%しかない。

問題を解決するためには根本を解決するしかない。麻薬カルテルを絶滅させるか、アメリカの強欲を断つか…

安価だからこそ広く浸透する。米国では毎年10万人を超す死者が出ているが、利用者数はどれ位なのか見当もつかない。どこまで社会に浸透しているのか。結果として、メキシコ・マフィアは、その膨大な数の使用者から「薄く広く」利益を得ることで、莫大な利益を上げている。そして、その莫大な利益で、政治家や警察を買収し、強力な軍事力を持ち、どんどん強大になり、メキシコ政府だけでは手が付けられなくなっている。

人間は「ドーパミンの奴隷」だとも言われる。メキシコ・マフィアは、フェンタニルを使い、ドーパミンを操ることで人間を中毒にさせ、そこから離れられなくしている。

まさにビッグテック企業と同じ戦略だ。薄く広く浸透させ、ドーパミンを操り中毒にさせ、離れられなくし、死ぬまで利益を搾り取る。悪魔的な戦略だ。