この70年代から80年代のアメリカの低迷期においては、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるように、日本が世界経済を席巻していた。この時期のアメリカはほぼ死にかけの病人みたいな状況だったが、ここからまた状況が一変する。

1979年にFRB議長に就任したポール・ボルカーは 、インフレ退治のため思い切った金利切り上げを行い、市場の資金量を減らした。当然、景気が冷え込みマイナス成長になるなどの副作用も大きかったが、1983年には1964年から20年近くアメリカを苦しめたインフレの退治に成功した。

そしてレーガン大統領(任期1981~1989年)による歳出削減・減税・規制緩和の「レーガノミクス」という供給サイド改革も合わさり、アメリカが復活を始めた。

その後ブッシュ政権時に湾岸戦争(1991年)で一時躓きはあったが、1993年にクリントン大統領(任期1993〜2001年)が就任すると、その下で「ニューエコノミー」と呼ばれる戦後最長の経済拡張期を迎える。

同時期の1980年代から1990年代には各種の金融規制が撤廃され金融自由化が実現され、アメリカの金融機関は「世界の銀行」となり、世界からお金を集め、それを世界中に投資することで莫大な利益を上げるようになる。

その後アメリカ経済は2001年のITバブルや2008年のリーマンショック、2019年の新型コロナパンデミックなどの何度もの危機を経験したが、経済は一貫して拡大を続け、その繁栄は1990年代から現在まで30年以上続いている。

我々のイメージの中では、この30年以上の繁栄がバイアスとなり、それ以前のアメリカの浮き沈みの激しい姿が忘れさられている。しかし忘れてはならないのは、アメリカは常に最強国であったわけでは無いことだ。そして、これからも変化は起こり得ることを。