トランプのやろうとしていることは、経済学的な視点では矛盾だらけで、多くの経済学者からは批判が相次いでいる。トランプは「常識の転換」と言い、今までの民主党やヨーロッパの国々が先導していた「グリーンでグローバルで多様」という世界常識を完全否定した。日本のマスコミも世界常識の中に浸っていたので、トランプを否定する報道が相次いでいる。

確かにトランプの政策の中には矛盾が多く、これからどうなるかは未知数だ。しかし私は、トランプの演説の中に、司馬遼太郎さんが言っていた「明治維新時代の、痛々しいばかりの昂揚と楽天主義」を感じた。

「景気は気から」は経済の本質を見抜いた格言だ。我々アジア人にもかつては「昂揚と楽天主義」が存在した。日本の明治維新や戦後高度成長期、中国の改革開放後の高度成長期などだ。そしてアメリカにもベトナム戦争以降の、戦争疲れとスタグフレーションによる陰鬱とした暗黒時代があった。

経済にとって大切なことは、正しい政策よりも「昂揚と楽天主義」だ。そしてアメリカにはトランプという楽天主義の権化のような大統領が登場した。

司馬さんは坂の上の雲で「彼らは明治という時代人の体質で、前をのみを見つめながら歩く。上って行く坂の上の青い天に、もし一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて、坂を上っていくであろう。」と述べていた。

そして、その先に驚異的な経済成長と、バルチック艦隊を破るという奇跡があった。

我々は明治の人々のように、前のみを見つめて、坂を登っていけるのだろうか?