トランプが1期目の政権時に行った「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」は大きな成果を上げている。USMCA成立の2020年以降メキシコやカナダのアメリカとの貿易額は急速に伸びた。中国もその間、順調にアメリカとの貿易額を伸ばして、アメリカのコロナ回復期の旺盛な消費を支えた。

しかし、それでもアメリカのリベンジ消費は支えきれず、急激なインフレとなった。もしメキシコ・カナダとの自由貿易協定が無く、中国との貿易戦争が悪化していたら、インフレは間違いなく更に悲惨なことになっていた。

そして今回トランプは、アメリカのコロナ回復期を助けてくれた3カ国と対峙しようとしている。特に、メキシコとカナダにとっては、今回の「関税」騒ぎは寝耳に水だった。たった4年前に締結した自由貿易協定を、締結した本人が、止めると言っているのだ。

自由貿易協定を信じて、メキシコとカナダに進出した企業もたまったものではない。サプライチェーンの構築には、長い年月と努力とお金が必要だ。それを政治家のご機嫌次第でコロコロ変えられては…

アダムスミスは「消費こそが生産の唯一の目的」と言っているように、すべては消費者のためだ。メキシコ・カナダ・中国との「交易」で最も恩恵を受けているのは、3カ国の製造業者ではなく、アメリカの消費者だ。

コロナ回復期のインフレがこの程度で済んだのも、3カ国のおかげであることを忘れてはいけない。

確かにフェンタニル(=麻薬)は、アメリカ社会にとって非常に大きな脅威だ。しかしそれは「関税」で解決できる問題ではない。「関税」はアメリカ国内の消費者を苦しめるだけだ。