トランプは「関税(タリフ)、それは最も美しい言葉だ。」とまで言っている。関税の何が、大統領をそこまで引き付けるのだろうか?

アメリカには「通商法301条」というものがある。これは、米国の1974年通商法に規定されている条項で、不公正な貿易を行う国に対して米国が貿易措置を課すことができる法律で、不公正な貿易かどうかは、大統領の補佐機関である米通商代表部(USTR)が調査・判断し、制裁措置の発動は大統領が行う。いずれも大統領権限によるもので、議会の承認は必要ない。だからトランプの様な大統領にとっては非常に使い勝手が良いため、「最も美しい言葉」とまで言わしめたのだ。

そして早速、まだ就任式まで2ヶ月もあるのに「メキシコとカナダからの輸入に25%、中国からの輸入に10%の追加関税を就任初日に課す。」と発表した。

この根拠になっているのは「フェンタニル(=麻薬)」だ。トランプは「毎日数千の人々がメキシコとカナダを通じて米国に流入しており、犯罪と麻薬を持ち込んでいる」とし、中国は「麻薬の原材料をメキシコに輸出している」からとしている。

しかしトランプは1期目の政権時の2020年7月に、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を発効させている。同協定の原産地規則を満たした製品の域内貿易については、基本的に関税が免除されることから、日米を含む多くの企業が両国に拠点を置いて米国に輸出するサプライチェーンを構築している。

本当に「関税」が実行されれば、企業にとっては、構築したばかりのサプライチェーンが、間違いなく大きな打撃を受けることになる。

自分で作ったものを、自分で壊す…さすがトランプとしか言いようがない。