なぜ「関税」は経済学的に「最も悪手」と言われているのだろうか?
経済学には「余剰」という概念があるが、まぁ「利益」と考えてもらったら分かりやすい。そして「余剰」は、消費者余剰と生産者余剰に分かれるが、この合計を最大化するのが「自由貿易」だ。
例えばお米の国際価格は60kgで約5000円だが、国内価格は約16,000円なので、日本人は国際価格より3倍以上高いお米を食べている。これを自由貿易にすると、図1のように国際価格まで価格が下落し、消費者余剰は最大化する。スミスの言う「消費こそが生産の唯一の目的」という意味では、消費者余剰の最大化は、正しい在り方だ。
しかし問題になるのが「生産者(国内)余剰は大きく減る」ことだ。要はここで生産者を守るために出てくるのが「関税」だ。しかし関税は図2のように、経済学で言う「死荷重(=国内の損失)」を過剰に発生させてしまうため、国民への不利益が非常に大きくなる。
だから「死荷重」を少しでも減らすために、多くの国で「関税」ではなく、図3のように「補助金」という方法が採用されている。すなわち、生産者を保護するなら、関税をかけるより、補助金を出す方が国全体にとっては好ましいということだ。
だから世界の農業は、まさに「補助金漬け」の状態だ。EUの農家は事実上「公務員」で、収入のほぼすべてを「補助金」で賄っている。EU予算で最大の支出が「農業予算」であり、公的資金で農業をやっているようなものだ。だがそれでも、国内に過剰な損失を与える「関税」よりもマシなので「補助金漬け」を行なっているというわけだ。
経済学的に「関税がなぜ最も悪手」なのか、理解できると思う。