米国政治の専門家が「今までの政権の政策は、“フランス料理のフルコース”のように論理が通っていたが、トランプの政策は“ホテルのバイキング料理”のように好きな物を摘み食いし論理が通っていない。」と言っていた。確かに和洋中なんでもありで、色々矛盾している。

トランプは2017年1月からの1期目に「国内の製造業を守る」という名目で、中国との貿易戦争を開始した。その一方でカナダ・メキシコとは自由貿易協定を結び、貿易は拡大し、中国も貿易戦争はありながらも辛抱強く「交易」を継続拡大した。

結果的に米国の製造業は衰退し続け、トランプは反対しているが、USスチールのような米国を代表するような企業までが、日本製鉄に買収されようとしている。

しかし大切なことは、どんなに製造業が衰退しようとも、米国自体は豊か(=GDPが成長した)になったという事実だ。

確かにアメリカ製造業のGDP比率は、1980年から2020年の間に20%から10%に半減した。しかし同期間でアメリカのGDP(=豊かさ)は7.5倍!にもなっているのだ。

製造業に変わる「別の産業(例えばIT産業)に特化」し、「世界と交易」することでアメリカは豊かになったのだ。まさにスミスやリカードが言っていた通りで「分業と交易」がアメリカを豊かにしてきた。

「製造業を守る!」とか「Make America Grate Again!(MAGA)」と言えば、政治家的には良いのだろうが、経済学的には「おろかの極み」だ。

1期目ののトランプは「運」が良かった。カナダ・メキシコとの自由貿易協定で「交易」が拡大し、中国も辛抱強く「交易」を継続した。しかし今回は3カ国に同時に対峙するのであれば、どうなるか分からない。分かっているのは「バイキング料理のつまみ食いは、何度も上手くいくことはない」ということだ。