今回の選挙結果の中で面白い調査結果があった。それは、ハリスに投票した人の78%は「生活は苦しくない」と答えた人で、トランプに投票した人の73%は「生活が苦しい」と答えた人だった。

この調査結果は、トランプが中低所得層の圧倒的支持を受けて勝利したことを表している。しかし政策的には民主党が社会保障などを重視し、富裕層に課税する方針を取っており、中低所得層に優しい政策のはずだ。

だが結果的には、中低所得層から完全に否定される形となったことは、非常に皮肉だ。

選挙の時に「悲惨指数(Misery index)」という指数がよく引用される。これは「インフレ率と失業率」を合計した、国民の悲惨さを数値化した指数だが、悲惨指数は10%を上回ると政策への不満が高まりやすく、政権にとっては警戒水準と言われている。この指数だけを見ると、2021年から2022年までの高かった悲惨指数が、この1年半は危険域を脱し、安定圏内に入ったので、バイデンに有利で当選すると言われていた。しかし結果は全く反対に出た。

その原因は悲惨指数には「金利」の要素が入っていないからだ。米連邦準備制度理事会(FRB)は高騰するインフレを抑えるために、2022年に入ってから急激に金利を上げ、現在も高止まりしている。これは借金(=クレジットなど)で消費をする中低所得層や、特に住宅を購入した人には大きな痛手となり、生活を直撃した。そうして「生活が苦しくなった」人々がトランプに投票し、共和党が圧勝した。

しかしよく考えてもらいたいのは「物価の安定と雇用の最大化」は、FRBに課せられた「2つの使命」だ。これはバイデン大統領の範疇ではない。政策金利の決定も当然FRBの仕事だ。2021年当時パウエルFRB議長は「このインフレは一時的なもの」として対策を取らず、高インフレを招き、2022年になってから急激に金利を上げる「失策」を犯した。

この事実から考えると、今回のトランプの圧勝は、「バイデン大統領の失策」ではなく、「FRBの失策のおかげ」と言う方が正しいと考える。